ヨセフと別れトリアーを後に、
フランクフルトへ向かう列車に乗っていた。
途中乗り換えをして、
フランクフルト中央駅には18時頃に到着した。
持ってきていた文庫本は全て読み切ってしまっていた。
特段すべき予定も無かった。
ただ、真夜中に夜行列車に乗ることだけが決まっていた。
行き先はハノーヴァー経由でベルリンだった。
中央駅に到着したが、
ベルリン行きはどうやら空港駅から出るようなので、
時間もたっぷりとあったし、歩いて行く事にした。
10キロ程度の距離なので、
大方三時間くらい歩けば着くだろう。
とその時は地図を眺めて思った。
バックパックを背負いながら歩いてみると、
郊外へ向かっている所為もあるが、
大都市にもかかわらずあまり街灯も無い。
ただただ住宅街が広がっていた。
途中まではマイン川に沿って行けば簡単に着く。
そう思っていた。
しかし、歩道と車道では道が違った上に森が広がっており、
明かりも無い中に犬の鳴き声までしてきた。
これで狂犬病にでもなったら困るなぁ、
などと考えながらも、
バックパックを背負いながら誰もいない道を黙々と歩いた。
天気も悪くなって来ていた。
ポツリ、ポツリと、いよいよ雨がパラつき始めた。
ちょうど向こう側から歩いてくる二人組の青年が見えた。
これは甚だ都合が良いと道を訊こうと声をかけた。
近くでよく見れば、一人は口にピアスが幾つも付いており、
所謂やんちゃな風貌した人達だった。
彼らはここにツーリストが歩いている事。
空港に向かって中央駅から歩いて来た事。
どちらに対してもとても驚いていた。
ありえないと。
これまでで2時間以上歩いていた事を告げると。
ダメ押しで驚いていた。
しかし、とても親切な彼らは、
近くのトラムまで一緒に歩いてくれて上に、
いつもやっているのか、
無銭乗車でトラムからSバーン(近郊列車)に乗り継ぎ、
空港に向かう途中にあるサッカー場から乗車して来た、
フランクフルトのサポーターたちに、
もみくちゃにされながらも空港まで連れて行ってくれた。
移動しながら話しているうちに盛り上がり、
列車が来るまで3人でビールを飲みかわす事になった。
実に良い人たちだった。
二人いるうち一人はそこそこ英語が喋れたが、
もう一人は全然だめで、
会話には難儀したがとても愉しかった。
ケルンで渡しそびれた土産をこの人たちに差し上げ、
列車が到着し気分良くフランクフルト空港を離れた。
そして空港を出た列車が最初に停車したのは、
フランクフルト中央駅だった事は彼らに内緒である。